野島春樹の沈思黙考

心に移ろいゆくよしなしごと

額田王(ぬかたのおおきみ) 和歌 万葉集 夏 雑歌

あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る

(あかねさす むらさきのゆき しめのゆき のもりはみずや きみがそでふる)

                               額田王

                              万葉集・巻一・20

〈現代語訳・口語訳〉

あかね色をおびる、紫草の野を行き、その禁じられた野を行きながら、野の番人は見るのではないでしょうか。あなたが袖をお振りになるのを。

 

※この歌の前書きには、「大海人皇子が蒲生野で狩りをしたときに、額田王が詠んだ歌」と記されています。額田王飛鳥時代歌人です。大海人皇子(のちの天武天皇)と結婚をして子どもをもうけていましたが、この歌を詠んだときには、大海人皇子とは別れて、天智天皇大化の改新で有名な中大兄皇子大海人皇子の兄)と恋人でした。

 

宴会の席で額田王は、大海人皇子との昔の関係を題材に詠んだ一首です。

 

今は天智天皇と付き合っているけど、大海人皇子は、実はまだ私に気があり、彼は気があって、彼は袖を振って好きだと伝えてくるわ。そんなあちこちで袖を振るのを、見張りの野守が見てはいないだろうか。秘めた恋がばれはしないだろうか。