俳句
一つ根に 離れ浮く葉や 春の水 (ひとつねに はなれうくはや はるのみず) 高浜虚子 〈意味〉 春の水辺に二つの離れて浮いている葉が見えるなぁ。よく見ると根が一つに繋がっている。
風鈴や 花にはつらき 風ながら (ふうりんや はなにはつらき かぜながら) 与謝蕪村 〈意味〉 風鈴が鳴っていることだ。咲いている花は散ってしまうほどの風であるが。
閑さや 岩にしみ入る 蝉の声 (しずかさや いわにしみいる せみのおと) 松尾芭蕉
来しかたや 馬酔木咲く 野の日のひかり (きしかたや あしびさく ののひのひかり) 水原秋桜子 〈意味〉 歩いてきた方向を振り返ってみると、馬酔木の白い花が咲き乱れる春の野に、さんさんと日が降り注ぐ美しい光景が広がっていることだ。 馬酔木(あしび)
かんざしの 蝶ちらつくや 藤の花 (かんざしの ちょうちらつくや ふじのはな) 正岡子規 〈意味〉 簪(かんざし)のとまった蝶がひらひらと舞い散る。その様子が咲き誇る藤の花の風情と重なり。春の雅やかな美しさを際立たせている。
斧入れて 香におどろくや 冬木立 (おのいれて かにおどろくや ふゆこだち) 与謝蕪村 〈意味〉 冬枯れした木を斧で切りつけてみると、鮮烈な香りがしてきたので驚いたことだ。
うつくしき 海月浮きたり 春の海 (うつくしき くらげうきたり はるのうみ) 正岡子規 〈意味〉 春の海に美しいクラゲが浮いていることだ。
小泉八重子の生涯 小泉八重子(1931年 - 2020年)は、昭和、平成、そして令和という時代の変遷を俳句とともに歩んだ、現代俳句において個性的な光彩を放った俳人です。兵庫県に生を受け、その生涯において、病などの経験を経て内省を深め、俳句を自己表現の…
流星や 誰も乗らざる 電車過ぐ (りゅうせいや だれものらざる でんしゃすぐ) 小泉八重子 〈意訳〉 流星が夜空を流れる。その下を、誰も乗っていない電車が静かに通り過ぎていく。
奥や滝 雲に涼しき 谷の声 (おくやたき くもにすずしき たにのこえ) 宝井其角 〈意味〉 谷の奥にある滝よ。かかっている雲が日差しをさえぎって涼しい谷の物音であることよ。
馬場存義の生涯 馬場存義(ばば ぞんぎ、1703年3月15日 - 1782年10月30日)は、江戸時代中期の俳人で、江戸座の代表的な俳人として活躍しました。彼は俳諧宗匠として存義側を率い、与謝蕪村とも交友があったことが知られています。 生涯と俳諧への転身 存義…
この音羽 いでや躑躅の はな曇 (このおとわ いでやつつじの はなぐもり) 馬場存義 〈意味〉 音羽山を出ると、あたりは躑躅の花曇りであるなあ。 ※音羽 京都の音羽山を指すと考えられる。 ※花曇り 花の咲く頃に見られる薄曇りの天候を表す。春の季語。
木曽山へ 流れ込みけり 天の川 (きそやまへ ながれこみけり あまのがわ) 小林一茶 〈意味〉 天空を流れる天の川は、まるで木曽山に流れ込んでいるかのように見える。
阿波野青畝の生涯 阿波野青畝(あわの せいほ、1899年2月10日 - 1992年12月22日)は、奈良県出身の俳人で、昭和を代表する俳句作家の一人です。「ホトトギスの四S」と称される俳人グループの一員として知られ、特に写生俳句の発展に貢献しました。 幼少期と…
酪農の 殖えゆく家族 鯉のぼり (らくのうの ふえゆくかぞく こいのぼり) 阿波野青畝(あわのせいほ) 〈意味〉 酪農を営む家族が増えていく。その家の庭には、元気に泳ぐ鯉のぼりが立っている。
照葉添ふ 志野の花筒 薄茶点つ (てりはそふ しののはなつつ うすちゃたつ) 伊東よし子 〈意味〉 照葉が添えられた志野焼の花筒に、薄茶を点てる。 ※照葉(てりは)紅葉した葉 ※志野 志野焼(美濃焼の一種) ※花筒 花を生ける筒状の器 ※薄茶 抹茶の点て方の一…
蛍火や よしなき道も そこらほど (ほたるびや よしなきみちも そこらほど) 加賀千代女 〈意味〉 蛍が舞って光っているなぁ。あまり歩くにはよくない道だが、蛍にいない道に比べればそれほど悪くはない。
右城暮石の生涯 幼少期と青年期 右城暮石(本名:右城齊)は1899年、高知県長岡郡本山町に生まれました。彼の俳号「暮石」は故郷の地名に由来しています。幼少期は本山高等小学校に通いましたが、1913年に中退し、土佐電鉄に入社。その後、社会運動家の岡本…
山つつじ 折り来て活ける 花器探す (やまつつじ おちきていける かきさがす) 右城暮石 〈意味〉 山につつじを摘んできて、それを生けるのにふさわしい花器を探している。
奥山の 風はさくらの 声ならむ (おくやまの かぜはさくらの こえならむ) 飴山實 〈意味〉 奥山の風は桜の声なのだろう。
吾子の瞳に 緋躑躅宿る むらさきに (あこのめに ひつつじやどる むらさきに) 中村草田男 〈意味〉 わが子の瞳の中に緋躑躅の鮮烈な色彩が深く染み込み、紫の輝きを帯びている
葉桜の 下帰り来て 魚に塩 (はざくらの したかえりきて うおにしお) 細見綾子 〈意味〉 すっかり葉桜になった桜の木の下を帰って来て、下ごしらえとして魚に潮を振った。
木村蕪城の生涯 木村蕪城(きむら ぶじょう)は、昭和期の俳句界において独自の足跡を残した俳人であり、俳句結社「夏炉」の創設者としても知られています。 生い立ちと俳句への道 木村蕪城は1913年(大正2年)6月20日に鳥取県境港市で生まれました。本名は…
家庭訪問 つつじまつりの 中通る (かていほうもん つつじまつりの なかとおる) 木村蕪城 〈意味〉 家庭訪問の教師がつつじ祭りの中を通っている
山桜 雪嶺天に 声もなし (やまざくら せつれいてんに こえもなし) 水原秋桜子 〈意味〉 山桜が咲いている。見上げれば雪の峰が続き、その上に広がる天に声も出ない。
花に酒 僧とも侘ん 塩ざかな (はなにさけ そうともわびん しおざかな) 宝井其角 〈意味〉 花には酒だ。僧侶と飲むには侘びが必要だろう。塩を肴に酒を飲もう。
鷹羽狩行の生涯 幼少期と俳句への道 鷹羽狩行(本名:髙橋行雄)は1930年に山形県新庄市で生まれました。父は土木技師であり、その仕事の関係で広島県瀬戸田町(現在の尾道市)で少年期を過ごしました。1943年に旧制尾道商業高校に入学し、1946年に教師・新…
一本も なし南朝を 知る桜 (いっぽんも なしなんちょうを しるさくら) 鷹羽狩行 〈意味〉 一本もないんだな、かつて南朝があった頃を知る桜は。
春暁や 人こそ知らね 木々の雨 (しゅんぎょうや ひとこそしらね きぎのあめ) 日野草城 〈意味〉 春の夜明け前だなぁ。人々はみな眠っていて知らないのだろうけれど、木々にやわらかく雨が降り注いでいる。
坪内稔典の歩み 坪内稔典(つぼうち としのり)は、1944年生まれの俳人・国文学者であり、京都教育大学名誉教授として知られています。彼の俳句は、口誦性(こうしょうせい)と片言性(かたことせい)を重視し、軽快で遊び心のある作風が特徴です。さらに、…