野島春樹の沈思黙考

心に移ろいゆくよしなしごと

飴山實(あめやまみのる) 俳句 桜

奥山の 風はさくらの 声ならむ (おくやまの かぜはさくらの こえならむ) 飴山實 〈意味〉 奥山の風は桜の声なのだろう。

細見綾子(ほそみあやこ) 俳句 桜

葉桜の 下帰り来て 魚に塩 (はざくらの したかえりきて うおにしお) 細見綾子 〈意味〉 すっかり葉桜になった桜の木の下を帰って来て、下ごしらえとして魚に潮を振った。

水原秋桜子(みずはらしゅうおうし) 俳句 桜

山桜 雪嶺天に 声もなし (やまざくら せつれいてんに こえもなし) 水原秋桜子 〈意味〉 山桜が咲いている。見上げれば雪の峰が続き、その上に広がる天に声も出ない。

鷹羽狩行(たかはしゅぎょう) 俳句 桜

一本も なし南朝を 知る桜 (いっぽんも なしなんちょうを しるさくら) 鷹羽狩行 〈意味〉 一本もないんだな、かつて南朝があった頃を知る桜は。

坪内稔典(つぼうちとしのり) 俳句 桜

一日の どこにも桜と ハイヒール (いちにちの どこにもさくらと はいひーる) 坪内稔典 〈意味〉 一日のどこを見ても桜とハイヒールがある。

桂信子(かつらのぶこ) 俳句 桜

日曜の 素顔の一家 朝桜 (にちようの すがおのいっか あさざくら) 桂信子 〈意味〉 日曜日なので素顔で迎える一家と朝の桜である。

後藤夜半(ごとうやはん) 俳句 桜

夜櫻の ぼんぼりの字の 栗おこし (よざくらの ぼんぼりのじの くりおこし) 後藤夜半 〈意味〉 夜桜見物に出ているぼんぼりの字には「栗おこし」と書かれている。

小西来山(こにしらいざん) 俳句 桜

見返れば 寒し日暮の 山桜 (みかえれば さむしひぐれの やまざくら) 小西来山 〈意味〉 見返れば寒いなぁ、日暮の山桜よ。

村上鬼城(むらかみきじょう) 俳句 桜

ゆさゆさと 大枝ゆるる 桜かな (ゆさゆさと おおえだゆるる さくらかな) 村上鬼城 〈意味〉 ゆさゆさと大きい枝が揺れる桜であることだ。

富安風生(とみやすふうせい) 俳句 桜

まさをなる 空よりしだれ ざくらかな (まさをなる そらよりしだれ ざくらかな) 冨安風生 〈意味〉 真っ青な空からしだれ桜の花が垂れてくる。

水原秋桜子(みずはらしゅうおうし) 俳句 桜

灯は消えて 月のみのこる 寒桜 (ひはきえて つきにみのこる かんざくら) 水原秋桜子 〈意味〉 家の灯りが消えて、月だけが残るところに咲いている寒桜よ。

角川春樹(かどかわはるき) 俳句 桜

つくづくと 淋しき木なり 冬桜 (つくづくと さびしききなり ふゆざくら) 角川春樹 〈意味〉 つくづくと淋しい木であるなぁ。冬に咲く桜は。

細見綾子(ほそみあやこ) 俳句 桜

桜咲き らんまんとして さびしかる (さくらさき らんまんとして さびしかる) 細見綾子 〈意味〉 桜が咲いて、爛漫としているのにどこか寂しいのだ。

原 石鼎(はらせきてい) 俳句 桜

町並に 提灯かけし 桜かな (まちなみに ちょうちんかけし さくらかな) 原 石鼎 〈意味〉 街並みのあちらこちらに提灯をかけて賑わう桜であることだ。

山口草堂(やまぐちそうどう) 俳句 桜

さくら咲き 起居に目立つ 部屋の塵 (さくらさき ねおきにめだつ へやのちり) 山口草堂 〈意味〉 桜が咲いて、日常生活で部屋の塵が目立つようになった。

種田山頭火(たねださんとうか) 俳句 桜

さくら咲いて、なるほど日本の春で (さくらさいて、なるほどにほんのはるで) 種田山頭火 〈意味〉 桜が満開になって、なるほどこれこそが日本の春であると実感する。

夏目漱石(なつめそうせき) 俳句 桜

松をもて 囲いし谷の 桜かな (まつをもて かこいしたにの さくらかな) 夏目漱石 〈意味〉 松でもって囲まれている谷の中に咲く桜であることだ。

宝井其角(たからいきかく) 俳句 桜

小坊主や 松にかくれて 山ざくら (こぼうずや まつにかくれて やまざくら) 宝井其角 〈意味〉 上野寛永寺で働く小坊主たちよ。松に隠れているが山桜が満開だ。

星野立子(ほしのたつこ) 俳句 桜

葉桜の 影ひろがり来 深まり来 (はざくらの かげひろがりき ふかまりき) 星野立子 〈意味〉 葉桜の影が広がって来て、深まって来たことだ。

山口誓子(やまぐちせいし) 俳句 桜

葉桜が つくれる蔭に 入らばやと (はざくらが つくれるかげに いらばやと) 山口誓子 〈意味〉 葉桜が作った影に入りたいなと思ったものだ。

杉田久女(すぎたひさじょ) 俳句 桜

垣間見を 許さぬこの扉 山桜 (かいまみを ゆるさぬこのひ やまざくら) 杉田久女 〈意味〉 どうにか外を垣間見ようとしてもこの扉が許してくれない、山桜が咲いているのに。

高濱年尾(たかはまとしお) 俳句 桜

よき家に 泊り重ねて 朝桜 (よきいえに とまりかさねて あさざくら) 高浜年尾 〈意味〉 良くしてくれる家に何日も宿泊を重ねて見た朝の桜である。

飴山實(あめやまみのる) 俳句 桜

奥山の 風はさくらの 声ならむ (おくやまの かぜはさくらの こゑならむ) 飴山實 〈意味〉 奥山の風は桜の声なのだろう。

山口青邨(やまぐちせいそん) 俳句 桜

雨ふれば 雫しきりや 山ざくら (あめふれば しずくしきりや やまざくら) 山口青邨 〈意味〉 雨が降ると雫がしきりに落ちてくるなぁ、山桜の花は。

西東三鬼(さいとうさんき) 俳句 桜

仰ぎ飲む ラムネが天露 さくら散る (あおぎみる らむねがてんろ さくらちる) 西東三鬼(さいとうさんき) 〈意味〉 桜を仰いで飲むラムネの気泡がまるで霞んだ空に見える。仰いだ桜は散って花吹雪だ。

阿部みどり女 俳句 桜

夜桜や 遠くに光る 潦(にわたずみ) (よざくらや とほくにひかる にわたずみ) 阿部みどり女 〈意味〉 夜桜が咲いているなぁ。遠くに光っているのは雨が降って流れている水たまりだ。

飯田蛇笏(いいだだこつ) 俳句 桜

折りとりし 花のしづくや 山桜 (おりとりし はなのしづくや やまざくら) 飯田蛇笏 〈意味〉 折ってとったような花の雫のように咲くことだ。この山桜は。

上島鬼貫(うえじまおにつら) 俳句 桜

日よりよし 牛は野に寝て 山ざくら (ひよりよし うしはのにねて やまざくら) 上島鬼貫 〈意味〉 よい日和だ。牛は野に寝て山桜が咲いている。

正岡子規(まさおかしき) 俳句 桜

木の間に 白きもの皆 桜哉 (きのあいだに しろきものみな さくらかな) 正岡子規 〈意味〉 木の間に見える白いものはみんな桜の花であることだ。

小林一茶(こばやしいっさ) 俳句 桜

茶屋むらの 一夜にわきし 桜かな (ちゃやむらの いちやにわきし さくらかな) 小林一茶 〈意味〉 花見客目当ての茶屋村が一夜にして湧いたようにあらわれた桜の名所であることだ。