和歌・短歌
壬生忠見の生涯 壬生忠見(みぶのただみ)は、平安時代中期の歌人で、三十六歌仙の一人に数えられています。 生涯と官職 壬生忠見は、父・壬生忠岑とともに和歌の才能を持ち、幼少期から歌壇で活躍しました。彼の官職については、以下の記録があります。 954…
恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか (こひすてふ わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひそめしか) 壬生忠見 〈現代語訳・口語訳〉 わたしが恋をしているという噂が、もう世間の人たちの間には広まってしまったようだ…
平兼盛の生涯 平兼盛(たいらのかねもり)は、平安時代中期の貴族であり、優れた歌人として知られています。 出自と家族背景 平兼盛は光孝天皇の玄孫であり、もともとは「兼盛王」と称していましたが、臣籍降下して平姓を名乗るようになりました。彼の父は平…
忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで (しのぶれど いろにいでにけり わがこひは ものやおもふと ひとのとふまで) 平兼盛 〈現代語訳・口語訳〉 人に知られまいと恋しい思いを隠していたけれど、とうとう隠し切れずに顔色に出てしまっ…
源等の生涯 基本情報 生誕 880年(元慶4年) 死没 951年(天暦5年) 父 源希(みなもとのまれ) 官位 正四位下・参議 別名 参議等(さんぎひとし) 源等は、嵯峨源氏の一族であり、源希の次男として生まれました。彼は公卿として朝廷に仕え、地方官としても…
浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき (あさぢふの をののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひしき) 参議等(源等) 〈現代語訳・口語訳〉 浅茅の生えた寂しく忍ぶ小野の篠原ではありませんが、あなたへの思いを忍んではい…
笹の葉は み山もさやに さやげども 我れは妹思ふ 別れ来ぬれば (ささのはは みやまもさやに さやげども あれはいもおもふ わかれきぬれば) 柿本人麻呂 万葉集・巻二・133 〈現代語訳・口語訳〉 笹の葉は山に満ちてざわざわと風に鳴っているが、私の心は一…
右近の生涯 右近(うこん)は、平安時代中期に活躍した女流歌人であり、『百人一首』にも選ばれた人物です。彼女の生涯についてさらに詳しく説明します。 生涯と背景 右近の生没年は不詳ですが、10世紀後半(946年~967年頃)に活躍したとされています。彼女…
忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな (わすらるる みをばおもはず ちかひてし ひとのいのちの をしくもあるかな) 右近 〈現代語訳・口語訳〉 あなたに忘れられる我が身のことは何ほどのこともありませんが、ただ神にかけて、私をいつ…
春の園 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つ娘子 (はるのその くれなゐにほふ もものはな したてるみちに いでたつをとめ) 大伴家持 万葉集・巻十九・4139 〈現代語訳・口語訳〉 春の苑に紅が照り映える。桃の花の下の輝く道に、現れ立つ乙女。
文屋朝康の生涯 文屋朝康(ふんやのあさやす)は、平安時代前期の歌人・官人であり、「六歌仙」の一人である文屋康秀の息子です。 生涯と官職 文屋朝康の生没年は不明ですが、平安時代前期に活躍したことが記録されています。彼は官人としても活動し、以下の…
白露に 風の吹きしく 秋の野は しらぬきとめぬ 玉ぞ散りける (しらつゆに かぜのふきしく あきののは しらぬきとめぬ たまぞちりける) 文屋朝康 〈現代語訳・口語訳〉 草葉の上に落ちた白露に風がしきりに吹きつけている秋の野のさまは、まるで糸に通してと…
稲つけば かかる我が手を 今夜もか 殿の若子が 取りてなげかむ (いねつけば かかるあがてを こよひもか とののわくごが とりてなげかむ) 東歌(未勘国) 万葉集・巻十四・3459 〈現代語訳・口語訳〉 稲を舂くとあかぎれが切れる私の手を、今夜も若殿さま…
清原深養父の生涯 清原深養父(きよはらのふかやぶ)は、平安時代中期(9世紀後半~10世紀前半)の歌人であり、貴族でした。彼の生涯についてさらに詳しく説明します。 生涯と経歴 清原深養父の正確な生没年は不明ですが、908年(延喜8年)に内蔵少允、923年…
夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ (なつのよは まだよひながら あけぬるを くものいづこに つきやどるらむ) 清原深養父 〈現代語訳・口語訳〉 夏の夜は、まだ宵のうちだと思っているのに明けてしまったが、こんなにも早く夜明けが…
香具山は 畝火雄々しと 耳成と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古も しかにあれこそ うつせみも 妻を争ふらしき (かぐやまは うねびををしと みみなしと あひあらそひき かみよより かくにあるらし いにしえも しかにあれこそ うつせみも つまをあらそふ…
紀貫之の生涯 生い立ちと家系 紀貫之(きのつらゆき)は、平安時代前期から中期にかけて活躍した貴族・歌人です。彼は紀氏の出身で、父は紀望行でした。紀氏は古くから朝廷に仕えた家柄であり、貫之もその流れを受け継ぎました。幼名は「阿古久曽(あこくそ…
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける (ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほひける) 紀貫之 〈現代語訳・口語訳〉 さて、あなたの心は昔のままであるかどうか分かりません。しかし馴染み深いこの里では、花は…
旅にして もの恋しきに 山下の 赤のそほ船 沖を漕ぐ見ゆ (たびにして ものこほしきに やましたの あけのそほふね おきをこぐみゆ) 高市黒人 万葉集・巻三・270 〈現代語訳・口語訳〉 旅にあって、何となく物恋しいのに、山下の赤丹(あかに)を塗った舟が…
藤原興風の生涯 出自と家系 藤原興風は藤原京家の出身で、参議・藤原浜成の曾孫にあたります。父は藤原道成で、興風も地方官としての役職を歴任しました。藤原京家は藤原四家の中でも比較的地位が低い家系でしたが、文化的な活動に積極的であり、興風もその…
誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに (たれをかも しるひとにせむ たかさごの まつもむかしの ともならなくに) 藤原興風 〈現代語訳・口語訳〉 友達は次々と亡くなってしまったが、これから誰を友とすればいいだろう。馴染みあるこの高砂の…
君が行く 道のながてを 繰り畳ね 焼きほろぼさむ 天の火もがも (きみがゆく みちのながてを くりたたね やきほろぼさむ あめのひもがも) 狭野弟上娘子(さののおとがみのをとめ) 万葉集・巻十五・3724 〈現代語訳・口語訳〉 あなたのいらっしゃる道の…
紀友則の生涯 幼少期と家系 紀友則は、平安時代前期の名門・紀氏の出身で、紀有友の子として生まれました。紀氏は古代から続く家柄であり、学問や文化の分野で優れた人材を輩出していました。彼の従兄弟には紀貫之がいて、後に文学的なパートナーとなりまし…
久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ (ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづこころなく はなのちるらむ) 紀友則 〈現代語訳・口語訳〉 こんなにも日の光が降りそそいでいるのどかな春の日であるのに、どうして落ち着いた心もなく、花…
筑波嶺の 嶺ろに霞居 過ぎかてに 息づく君を 率寝て遣らさね (つくはねの ねろにかすみゐ すぎかねて いきづくきみを ゐねてやらさね) 東歌(常陸) 作者不詳 〈現代語訳・口語訳〉 筑波山の頂に霞がかかってうごかないように、通りすぎかねて溜息をついてい…
春道列樹の生涯 春道列樹(はるみちのつらき)は、平安時代前期の官人であり、優れた歌人としても知られています。 出自と官職 春道列樹は、主税頭(あるいは雅楽頭とも伝えられる)を務めた春道新名の子として生まれました。彼の家系は、古代の有力氏族であ…
山川に 風にかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり (やまがわに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ もみじなりけり) 春道列樹 〈現代語訳・口語訳〉 山の中の川に、風が掛けた流れ止めの柵(しがらみ)がある。それは、流れきれないでいる…
我のみや 夜舟は漕ぐと思へれば 沖辺の方に梶の音すなり (われのみや よふねはこぐと おもへれば おきへのかたに かぢのおとすなり) 遣新羅使人 万葉集・巻十五・3624 〈現代語訳・口語訳〉 われわれだけが夜の海を漕いでいると思っていると、沖の方から…
坂上是則の生涯 坂上是則(さかのうえのこれのり)は、平安時代前期から中期にかけて活躍した貴族・歌人であり、三十六歌仙の一人として名を残しています。 1. 家系と背景 坂上是則は、坂上氏の一員として生まれました。坂上氏は、征夷大将軍として名高い坂…
朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 触れる白雪 (あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき) 坂上是則 〈現代語訳・口語訳〉 夜が明ける頃あたりを見てみると、まるで有明の月が照らしているのかと思うほどに、吉野の…