旅にして もの恋しきに 山下の 赤のそほ船 沖を漕ぐ見ゆ
(たびにして ものこほしきに やましたの あけのそほふね おきをこぐみゆ)
万葉集・巻三・270
〈現代語訳・口語訳〉
旅にあって、何となく物恋しいのに、山下の赤丹(あかに)を塗った舟が沖へ漕ぎのが見えることだ。

※高市黒人 (生没年不詳) 飛鳥時代の官人・歌人。姓は連(むらじ)。持統・文武両朝で下級官人を努めたらしいが、官歴は伝わらない。『万葉集』に短歌18首が採録されているが、大宝元年(701年)の持統上皇の吉野宮行幸、翌大宝2年(702年)の三河国行幸に同行した際の詠歌を始め、「羈旅の歌八首」など、全て旅中で詠んだ作品である。その足跡は、大和・山城・摂津・近江の機内に加え、尾張・三河・越中の諸国にまで及んでいる。また『玉葉和歌集』『新拾遺和歌集』に1首ずつ入集する勅撰歌人でもある。
※赤(あけ)のそほ 赤丹(あけのそほ)で、赤い土のこと。赤のそほ船は赤い土を塗った船の意味。