『My Favorite Things』 ジョン・コルトレーン
ジョン・コルトレーンの『My Favorite Things』は、彼の音楽的な転換点を示すアルバムであり、ジャズ史においても重要な作品です。1960年10月に録音され、1961年にアトランティック・レコードからリリースされました。
音楽的背景と革新
このアルバムは、コルトレーンがソプラノ・サックスを本格的に導入した作品として知られています。彼はそれまで主にテナー・サックスを演奏していましたが、ソプラノ・サックスの独特な音色を活かし、より流麗で旋律的なアプローチを試みました。特にタイトル曲「My Favorite Things」は、ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の楽曲をモーダル・ジャズのスタイルで再構築したもので、彼の演奏スタイルの変革を象徴しています。
演奏スタイルと技法
コルトレーンはこのアルバムで「シーツ・オブ・サウンド(Sheets of Sound)」と呼ばれる奏法を駆使し、音の流れを途切れさせることなく、連続的なフレーズを生み出しています。この技法により、楽曲は独特の浮遊感を持ち、聴く者を没入させる効果を生み出しています。また、モーダル・ジャズの要素を強く取り入れ、従来のコード進行に縛られない自由な即興演奏を展開しました。
収録曲と構成
アルバムには以下の楽曲が収録されています。
- My Favorite Things(Richard Rodgers - Oscar Hammerstein)
- Everytime We Say Goodbye(Cole Porter)
- Summertime(Du Bose Heyward - George Gershwin)
- But Not For Me(George Gershwin - Ira Gershwin)
各楽曲は、コルトレーンの独自の解釈によって再構築され、原曲の持つ旋律を活かしながらも、ジャズの即興性を強く打ち出しています。
演奏メンバー
このアルバムの演奏には、コルトレーンのカルテットが参加しており、それぞれの楽器が彼の音楽的探求を支えています。
- ジョン・コルトレーン – ソプラノ・サックス(1,2曲目)、テナー・サックス(3,4曲目)
- マッコイ・タイナー – ピアノ
- スティーヴ・デイヴィス – ベース
- エルヴィン・ジョーンズ – ドラム
影響と評価
『My Favorite Things』は、コルトレーンのキャリアにおいて重要な転換点となった作品であり、彼の音楽的探求がより自由な方向へと進む契機となりました。このアルバムの成功により、彼はさらに実験的なアプローチを取るようになり、後の『A Love Supreme』や『Ascension』へとつながる道を開きました。
また、このアルバムはジャズ初心者にも親しみやすい作品として評価されており、特にタイトル曲は広く知られています。コルトレーンの演奏は、単なるアレンジではなく、原曲の持つ旋律を再構築し、彼独自の音楽的世界を創り上げています。
曲調と聞きどころ
ジョン・コルトレーンの「My Favorite Things」は、ジャズの歴史において革新的な作品であり、彼の演奏スタイルの変遷を象徴する楽曲です。さらに詳しく、曲調と聞きどころを掘り下げてみましょう。
曲調
この楽曲は、モーダル・ジャズのスタイルを採用しており、従来のコード進行に縛られず、モード(音階)を基盤とした自由な即興演奏が展開されます。コルトレーンはソプラノ・サックスを使用し、軽やかで流麗な音色を生み出しています。これにより、楽曲は浮遊感のある響きを持ち、聴く者を没入させる効果を生み出します。
また、ピアニストのマッコイ・タイナーの演奏が楽曲の雰囲気を決定づけています。彼のコードワークは、楽曲に独特のリズムとハーモニーを与え、コルトレーンの即興演奏を支える重要な要素となっています。
聞きどころ
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イントロのピアノ
タイナーのピアノが楽曲の基盤を作り、シンプルながらも印象的なコード進行を展開します。このイントロが楽曲全体の雰囲気を決定づけています。 -
コルトレーンのソプラノ・サックスの旋律
原曲のメロディを忠実に演奏しながらも、徐々に即興的なフレーズへと移行していきます。特に、彼の「シーツ・オブ・サウンド(Sheets of Sound)」奏法が際立ち、音の流れが途切れることなく続くのが特徴です。 -
ピアノソロの展開
タイナーのピアノソロは、楽曲の中盤で展開され、リズムの変化やコードの動きが非常に魅力的です。彼の演奏は、コルトレーンのサックスと対話するような形で進み、楽曲のダイナミズムを強調しています。 -
楽曲のクライマックス
コルトレーンの演奏が再び前面に出てきて、より自由な即興へと発展します。ここでは、彼の演奏のエネルギーが最大限に発揮され、楽曲の緊張感が高まります。 -
エンディングの余韻
最後は、再びテーマに戻り、穏やかに楽曲が締めくくられます。この構成により、楽曲全体が一つの物語のように展開され、聴く者に強い印象を残します。
この楽曲は、コルトレーンの演奏スタイルの変遷を示す重要な作品であり、彼の音楽的探求の一端を感じることができます。
