①プラトンの生涯と思想
プラトン(紀元前427年頃 - 紀元前347年頃)は、
古代ギリシアの哲学者であり、ソクラテスの弟子、アリストテレスの師として知られています。彼の生涯は、哲学、政治、教育に深く関わり、西洋哲学の基礎を築きました。
生涯
プラトンの思想
プラトンの影響
プラトンの生涯と思想は、古代ギリシアの文化と哲学を理解する上で非常に重要です。

②プラトンの哲学と思想
(2)イデア論
(2)エロース
プラトンのエロースは、単なる性愛や恋愛感情を超えた、哲学的な概念です。彼の著作『饗宴(シュンポシオン)』において、エロースは重要なテーマとして扱われています。
エロースの多義性
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プラトンにおけるエロースは、現代の「エロス」という言葉が持つような、性的な意味合いだけではありません。
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それは、欠如からくる欲望、美しいものへの憧れ、魂を高みへと導く力など、多岐にわたる意味を含んでいます。
『饗宴』におけるエロース
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『饗宴』は、様々な人物がエロースについて語り合う対話篇です。
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ソクラテスは、ディオティマという女性から教えられたエロースについての話を語ります。
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ディオティマによれば、エロースは神と人間の間を取り持つ存在であり、美しいもの、善いものを求める欲望です。
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エロースは、肉体的な美しさへの愛から始まり、魂の美しさ、知識、そして最終的には「美そのもの」であるイデアへと至る道を示します。
エロースの階梯
プラトンは、エロースが段階的に高まっていくと考えました。
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肉体的な美への愛
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最初の段階は、特定の肉体的な美しさへの愛です。
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全ての肉体的な美への愛
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次に、個々の肉体的な美しさから、全ての肉体的な美しさへの愛へと広がります。
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魂の美への愛
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さらに、肉体的な美しさから、魂の美しさ、つまり精神的な美しさへの愛へと高まります。
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制度や法律の美への愛
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そこから、制度や法律の美しさ、つまり社会的な美しさへの愛へと広がります。
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学問の美への愛
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さらに、学問の美しさ、つまり知識への愛へと高まります。
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美そのもの(イデア)への愛
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最終的には、個々の美しいものから離れ、「美そのもの」であるイデアへの愛へと至ります。
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エロースの意義
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プラトンにとって、エロースは魂を真理へと導く力であり、哲学的な探求の原動力です。
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エロースを通して、人間は感覚的な世界を超え、イデアの世界へと近づくことができると考えました。
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プラトンのエロースの概念は、後の西洋思想における愛の概念に大きな影響を与えました。
プラトンのエロースは、愛を単なる感情ではなく、魂の成長と真理の探求に関わる重要な要素として捉えた、独特で深い概念です。
(3)魂の想起
プラトンの魂の想起(アナムネーシス)は、彼の哲学における重要な概念であり、知識の獲得に関する独特な理論です。
魂の想起の概要
プラトンは、私たちが経験する感覚的な世界は、常に変化し、不完全なものであると考えました。それに対し、真の知識は、永遠不変で完全な「イデア」の世界にあると主張しました。そして、人間の魂は、肉体に宿る以前にイデアの世界に存在し、そこで真の知識を所有していたと考えました。
魂の想起の意義
- 知識の根源
- 教育の役割
- プラトンにとって、教育とは、魂が真の知識を思い出すことを助ける行為でした。
- 教師は、生徒に知識を教え込むのではなく、対話を通して生徒自身が真理に気づくように導く役割を担うと考えました。
- 哲学的な探求
プラトンの魂の想起は、人間の知識、教育、そして存在そのものについての深い考察を含む、彼の哲学の核心をなす概念です。
(4)四元徳(しげんとく)
プラトンの四元徳とは、彼の著作『国家』で論じられた、理想的な国家と個人の魂に求められる四つの主要な徳のことです。
四元徳とは
プラトンは、人間の魂を「理性」「気概」「欲望」の三つの部分に分け、それぞれの部分が持つべき徳を論じました。そして、これらの徳が調和することで、全体として「正義」が実現されると考えました。
- 知恵(知性)
- 勇気(果敢)
- 気概の部分が持つべき徳であり、困難や危険に立ち向かう精神力、正しいことを貫く意志を指します。
- 国家においては、防衛者階級がこの勇気を体現し、国を守る役割を担うべきだと考えました。
- 節制(自制)
- 正義
- これら三つの徳が調和し、それぞれの部分が本来の役割を果たすことで実現される、全体的な徳です。
- プラトンは、正義が実現された状態を、国家においても個人の魂においても、最も理想的な状態であると考えました。
四元徳の意義
- プラトンの四元徳は、個人の倫理的な生き方だけでなく、理想的な社会のあり方を考える上でも重要な概念です。
- これらの徳は、現代においても、人間の道徳的な成長や、社会の健全な発展を考える上で、重要な示唆を与えてくれます。
- プラトンの四元徳の概念は、西洋思想における倫理観の基礎となり、後の哲学や神学にも大きな影響を与えました。
プラトンの四元徳は、人間の内面的な調和と、社会全体の調和を追求する、彼の哲学の核心をなす概念と言えるでしょう。
(5)国家と哲人政治
プラトンの『国家』は、彼の代表的な著作の一つであり、理想的な国家のあり方と、そこで生きる人々の倫理について論じたものです。その中心的な概念が「哲人政治」です。
プラトンの国家論の背景
プラトンが生きた古代ギリシアのポリス(都市国家)は、政治的な混乱と不正が蔓延していました。特に、彼の師であるソクラテスが不当な裁判によって死刑に処されたことは、プラトンに深い絶望感を与えました。プラトンは、このような現実の政治に対する批判的な視点から、理想的な国家のあり方を模索しました。
理想国家の構成
プラトンは、人間の魂を「理性」「気概」「欲望」の三つの部分に分け、それぞれの部分が持つべき徳を論じました。そして、これらの徳が調和することで、全体として「正義」が実現されると考えました。この魂の構造は、国家の階級構造にも反映されています。
- 哲人(哲人王)
- 理性の部分を代表し、知恵を最もよく体現する階級です。
- 彼らは、真理を愛し、善のイデアを追求する哲学者であり、国家の統治者として最もふさわしいと考えられました。
- 防衛者(軍人)
- 気概の部分を代表し、勇気を体現する階級です。
- 彼らは、国家の防衛と秩序維持を担い、哲人の指示に従って行動します。
- 生産者(市民)
- 欲望の部分を代表し、節制を体現する階級です。
- 彼らは、農業、商業、手工業などの生産活動に従事し、国家の経済的な基盤を支えます。
プラトンが理想としたのは、哲人が王となり、あるいは王が哲学者となる「哲人政治」です。
- 哲人王の役割
- 哲人王は、善のイデアに基づいて国家を統治し、正義を実現する役割を担います。
- 彼らは、私欲にとらわれず、公共の利益を最優先に考え、知恵と正義によって国家を導きます。
- 哲人政治の目的
- 哲人政治の目的は、国家全体の調和と幸福を実現することです。
- 各階級がそれぞれの役割を果たすことで、国家全体が正義に基づいて秩序正しく運営されると考えました。
哲人政治への批判
プラトンの哲人政治は、現代においては、以下のような批判を受けることもあります。
- エリート主義
- 哲人による支配は、民主主義的な価値観と相容れないという批判があります。
- 理想主義
- 哲人王の実現は、現実的には困難であるという批判があります。
- 全体主義
- 国家による個人の生活への介入が大きく、全体主義的な傾向があるという批判もあります。
しかし、プラトンの国家論は、現代においても、政治哲学や倫理学において重要な議論の対象となっています。

③プラトンの哲学と思想の意義と価値
プラトンの哲学は、古代ギリシアの時代に生まれながら、現代においてもその意義と価値を失っていません。彼の思想は、倫理、政治、認識論など、多岐にわたる分野に影響を与え、私たちの思考に深い洞察を与えてくれます。
プラトン哲学の意義
- 西洋哲学の基礎
- 倫理と政治への影響
- プラトンの『国家』は、理想的な国家のあり方を追求し、正義、善、美といった普遍的な価値について考察しました。
- 彼の政治思想は、現代の政治哲学にも影響を与え、理想的な社会のあり方を考える上で重要な示唆を与えてくれます。
- 認識論への貢献
- 教育思想への影響
プラトン哲学の価値
- 普遍的な問いへの探求
- プラトンは、人間の存在、真理、善、美など、時代を超えて普遍的な問いを探求しました。
- 彼の思想は、現代においても、私たちが人生の意味や価値について考える上で重要な指針となります。
- 批判的思考の重要性
- 倫理的な生き方の追求
- 理想の追求
プラトンの哲学は、現代においても、私たちが人間とは何か、どのように生きるべきか、どのような社会を目指すべきかといった根源的な問いについて考える上で、重要な示唆を与えてくれるでしょう。

④プラトンの生きた時代
プラトンが生きた時代は、古代ギリシアの古典期と呼ばれる時代であり、紀元前5世紀後半から紀元前4世紀半ばにかけての期間です。この時代は、ギリシア文化が最も栄えた時代であり、哲学、芸術、文学、政治など、様々な分野で優れた業績が生まれました。
プラトンが生きた時代の特徴
プラトンの生涯と時代
- プラトンは、紀元前427年頃にアテナイの名門貴族の家に生まれました。
- 若い頃から、文学、詩、体育など、当時のギリシアの伝統的な教育を受けました。
- 20歳頃にソクラテスと出会い、彼の弟子となり、哲学に深く傾倒しました。
- ソクラテスの死後、プラトンはメガラ、エジプト、イタリアなどを旅し、様々な思想や文化に触れました。
- アテナイに戻ったプラトンは、アカデメイアという学園を設立し、哲学、数学、天文学などを研究しました。
- プラトンは、晩年までアカデメイアで教え、著作活動を続け、紀元前347年頃にアテナイで亡くなりました。
プラトンの生きた時代は、政治的な混乱と文化的な繁栄が交錯する時代であり、彼の哲学は、そのような時代背景の中で生まれました。
⑤プラトンに関する書籍
プラトンに関する書籍は数多く出版されており、入門書から専門書まで幅広い選択肢があります。以下に、いくつかの書籍を紹介します。
入門書
プラトンの著作
- 『ソクラテスの弁明・クリトン』 (プラトン 著、岩波文庫)
- 『国家』 (プラトン 著、岩波文庫)
- 『饗宴』 (プラトン 著、岩波文庫)
- 愛(エロース)について語り合う対話篇です。プラトンの愛についての思想を知ることができます。
その他
